私は現在、いわゆる大手JTCに勤めています。
私の会社でも、2026年に入った頃から、生成AIを業務に活用しようという機運が一気に高まってきました。
まだ使い始めたばかりの人の中には、分からないことを質問したり、文章を少し整えてもらったりする程度の使い方にとどまっている人もいます。
一方で、若手社員を中心に、生成AIの活用範囲は急速に広がっています。
資料作成、メールの文章作成、議事録の要約、情報整理など、これまで人が時間をかけて行っていた業務を、生成AIに任せる場面が増えてきました。
この流れは、今後ますます加速していくはずです。
そして私は、生成AIの普及によって、これまで会社の中で使われてきた「仕事ができる人」という評価基準そのものが、大きく変わっていくのではないかと感じています。
これまで「仕事ができる」と評価されていた能力
会社員として働いていると、「あの人は仕事ができる」と評価される人には、いくつかの共通点があります。
例えば、次のような能力です。
レスポンスが早い。
メールの文章が分かりやすい。
資料を作るのが早く、見せ方もうまい。
会議の内容を整理し、正確な議事録を作れる。
大量の情報を短時間でまとめられる。
こうした能力は、これまで会社員として高く評価されてきました。
実際、依頼された仕事を素早く処理し、分かりやすい資料やメールを作る人は、周囲から「優秀な人」と見られやすかったと思います。
ところが、生成AIを使えば、こうした業務の多くを短時間で、一定以上の品質に仕上げられるようになります。
メールの下書きを作らせる。
長い文章を要約させる。
会議メモから議事録を作らせる。
資料の構成や表現を考えさせる。
これまで一部の人だけが持っていた能力を、生成AIを使うことで、多くの人が簡単に再現できるようになります。
つまり、レスポンスの速さや資料作成のうまさだけでは、他の社員との差をつけにくくなるということです。
生成AIの普及によって、これまで会社員としての優位性になっていた能力の多くが、急速に一般化していくのではないでしょうか。
日本企業では解雇よりも採用抑制が進む
生成AIに関する議論では、「将来、ホワイトカラーの仕事の多くがなくなる」という話をよく耳にします。
確かに、これまで人が行っていた業務を生成AIが担うようになれば、会社全体の生産性は大きく上がります。
これまで10人で行っていた仕事を、将来的には7人や5人で回せるようになるかもしれません。
ただし、日本企業の場合、生成AIによって仕事が減ったからといって、すぐに社員を解雇することは難しいでしょう。
特に大手JTCでは、雇用を簡単に調整できるわけではありません。
そのため、最初のうちは会社も、
「生成AIで生まれた時間を、新しい取り組みに使おう」
「より付加価値の高い仕事に挑戦しよう」
といったことを言うはずです。
もちろん、それ自体は間違っていません。
しかし、空いた時間を使えば、すぐに新しい事業や仕事を生み出せるほど簡単な話でもありません。
新しい取り組みを考え、実際に事業として成立させることが簡単にできるのであれば、そもそも多くの会社が新規事業に苦労することもないでしょう。
そのため、日本企業では大規模な解雇よりも、まず採用人数を減らす方向に進むのではないかと私は考えています。
新卒採用を抑える。
中途採用を抑える。
定年退職や自己都合退職による自然減で、徐々に社員数を減らす。
生成AIによって生産性が上がれば、退職した社員の人数をそのまま補充する必要がなくなります。
これが、日本における生成AIの現実的な脅威ではないでしょうか。
今働いている人が突然解雇されるというよりも、これから会社に入る人の採用枠が減り、会社の中で必要とされる人数が少しずつ減っていく可能性があります。
これから評価されるのは「発意」を持つ人
生成AIが資料を作り、文章を書き、情報を整理するようになれば、会社員に求められる能力も変化していきます。
その中で、これまで以上に重要になるのが、その人自身の魅力と発意ではないかと考えています。
例えば、
「この人と一緒に働きたい」
「この人と仕事をすると安心する」
「この人がいるとチームの雰囲気が良くなる」
と思われるような人間的な魅力です。
生成AIは、一定水準の資料や文章を作ることはできます。
しかし、職場の人間関係を築き、周囲から信頼され、チームを前向きに動かすことは、簡単には代替できません。
そして、もう一つ重要になるのが、発意です。
「こういう仕事をやってみたい」
「この業務は、こう変えた方がいい」
「この顧客に、こんな提案をしたい」
「この課題を解決するために、新しい仕組みを作りたい」
このように、自分から何かを始めようとする意思は、生成AIが自動的に生み出してくれるものではありません。
生成AIは、指示されたことを整理し、形にすることは得意です。
しかし、そもそも何をやるべきなのか、何を変えたいのかという出発点は、人間が持つ必要があります。
これからは、きれいな資料を早く作れる人よりも、その資料を使って何を実現したいのかを語れる人の方が、評価されるようになるのではないでしょうか。
生成AIを使うだけでは差別化できない時代が来る
現在は、生成AIを積極的に使っているだけでも、周囲との差をつけられる場面があります。
生成AIでメールや資料を素早く作れば、これまでより多くの仕事を処理できます。
しかし、これは一時的な優位性だと思います。
いずれ多くの社員が生成AIを使うようになれば、生成AIを使うこと自体は特別な能力ではなくなります。
パソコンやインターネットが普及したように、生成AIも会社員にとって当たり前の道具になっていくでしょう。
そのときに問われるのは、生成AIを使えるかどうかではありません。
生成AIを使って、何をしたいのか。
どのような課題を解決したいのか。
周囲をどの方向へ動かしたいのか。
そうした人間側の意思が、これまで以上に重要になります。
生成AIの普及によって、仕事ができる人の定義は確実に変わっていきます。
資料を早く作る人、メールを上手に書く人、議事録をきれいにまとめる人というだけでは、十分な差別化ができなくなるかもしれません。
その一方で、人として信頼されること、自分の意思を持つこと、周囲を巻き込みながら行動することの価値は、むしろ高まっていくはずです。
生成AIによって人間の価値がなくなるのではありません。
生成AIによって、人間にしかできないことが、これまで以上にはっきりする。
大手JTCで生成AIの普及を目の当たりにしながら、私は今、そのように感じています。

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